三年目の私たち
ぼんやりと目を開けたら、ベッドには私だけ。まだ彼は帰ってきていないらしい。
カーテンの隙間からは、日が差し込んでくる気配すら感じられない。時間を確かめようと、枕元に置いた携帯電話手へと手を伸ばす。
手に触れた瞬間、玄関のドアが開く音が聴こえてきた。正確には玄関のドアにつけているドアチャイムの音。
彼が帰ってきた。
すぐさま伸ばした手を戻して、布団の中に潜り込む。息を潜めていると、静かに部屋のドアが開いた。
「ただいま」
彼の控えめで小さな声が聴こえたけど無視。寝たふりを決め込む。
私が寝ているのを確かめて、彼はすぐにドアを閉めた。足音が遠ざかっていく。
ほっとしたような、がっかりしたような複雑な気持ち。『ごめんね』ぐらい声をかけてくれてもいいじゃない。
テーブルの上の食事を見て、彼はどう思うだろう。
そんなことを考えながら、彼がお風呂に入る音に耳を澄ませていた。布団の中に潜り込んで。