三年目の私たち
彼の手が、私の髪を梳かしてくれる。
温かくて心地よくて、目を閉じた。
「昨日はごめん、今日は休みだから食事してから出かけようよ」
降り注ぐ彼の声とともに、穏やかに揺らぐ彼の腕と温もり。鼻先に感じる彼の匂いが、こんなにも愛おしいなんて。
「バカ」
悔しくて堪らなくて、思わず呟いた。聞き逃しても構わないほどの小さな声で。
それなのに、ちゃんと彼には聞こえていたらしい。
くすっと笑った彼は体を起こして、私の髪をかき上げる。私の顔を覗き込もうとするけど、恥ずかしくて直視なんてできない。
「バカでいい、バカがつくほど君が好きだから」
彼が目を細める。
ゆるりと弧を描いた唇を寄せて、髪に優しく指を絡ませながら。
ー 完 ー