きみのそばに
きみのそばに


星が綺麗な、よく晴れた夜だった。

暦の上では春なのに、日が落ちるとまだまだコートを手放せない。


「さぶ……」

つぶやくと、隣を歩く彼が少しだけ私のほうに身を寄せてきたような気がした。

ドキリとして顔をあげると、彼が不思議そうに首をかしげる。


気のせい……か。

小さく首を横に振ると、彼がコートのポケットに手を突っ込みながら正面を向いた。


「中学卒業して10年経つとか、信じられないよな。ほとんどのやつが、見た目も中身も全然変わってなかったし」

「そうだね」

何かを思い出したようにクスッと笑う彼の横顔を見上げる。


ほとんど変わらない。

でも、きみはあの頃よりもずっと背が伸びて、大人の魅力が増してかっこよくなってるよ。


隣を歩く彼。私の幼なじみを見つめながら、心の中でため息をつく。


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