きみのそばに


彼がいなくなる――…

最近ではまともに話をすることだってできていない、幼なじみとの希薄な関係。

それでも、遠くからたまに彼の姿を見かけるだけで、私の心は満たされていた。

だけどもう、それすらもできなくなる。



点滅を始める青信号。

渡らなければいけないのに、横断歩道の真ん中で立ち止まったまま動けない。


「走るぞ」

点滅した青信号が赤に変わる寸前。

茫然と立ちつくす私の手を彼がつかんだ。

温かい、大きな手のひら。

それが私の手を包み込み、導くように引っ張る。

信号が完全に赤になる前に横断歩道を駆け渡ると、彼が私を振り返って眉根を寄せた。


「お前、相変わらずぼんやりしてるな」

「そんなこと……」

反論しようと口を開くと、彼がまだつないだままの手を引っ張るようにして歩き始めた。



< 4 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop