きみのそばに
彼がいなくなる――…
最近ではまともに話をすることだってできていない、幼なじみとの希薄な関係。
それでも、遠くからたまに彼の姿を見かけるだけで、私の心は満たされていた。
だけどもう、それすらもできなくなる。
点滅を始める青信号。
渡らなければいけないのに、横断歩道の真ん中で立ち止まったまま動けない。
「走るぞ」
点滅した青信号が赤に変わる寸前。
茫然と立ちつくす私の手を彼がつかんだ。
温かい、大きな手のひら。
それが私の手を包み込み、導くように引っ張る。
信号が完全に赤になる前に横断歩道を駆け渡ると、彼が私を振り返って眉根を寄せた。
「お前、相変わらずぼんやりしてるな」
「そんなこと……」
反論しようと口を開くと、彼がまだつないだままの手を引っ張るようにして歩き始めた。