★☆限りなく遠い星☆★
夕がナオっちをひざの上にのせると、ヘッドセットを装着し終えたダイジュがもう一つのヘッドセットを取り出して夕に尋ねた。

「夕さんも、これを着けますか?」

「ええ、それじゃあ、あたしも」

夕はヘッドセットを受けとると、それを自分の頭にのせた。ひざの上のナオっちがそれを不思議そうな顔でながめている。

「スタンバイ」とダイジュ。

軽いエンジン音がした。夕は、頭の上の装置を見てつぶやいた。

「なんだか、難しそうな装置がいっぱいある」

「ええ、これから他の星を訪問するわけですから、ナブエイド(航行援助システム)とか、星雲間ポジショニングシステムとか、その他いろいろな装置がありますよ」

その時、目の前のディスプレイから別の音声が流れた。

「ブルームーン、こちら出発管制です。第3航路クリアード・フォー・テイクオフ(出発を許可します)。離陸してください」輸送タワーの出発管制からだった。

「出発管制、こちらブルームーンです。第3航路から出発します。テイクオフ」

航宙艇ブルームーンは出口に向かって滑り出した。タワーから出た航宙艇は、ステーション管制航路にしたがって低速度でしばらく飛行したが、管制領域を抜けると除々にスピードをあげた。

「わーっ、遠くの星が動いている」

いままで、停止していたように見えていた星同士の間隔が、長くなったり、短くなったりしている。航宙艇が光速で移動しているからだった。やがて、目の前には青白く輝く星が現れた。

「ダイジュさん。あそこに青い星が」

「アノイ星です」

「あの星には、空気あるの?」

「ええ、星全体が大気で包まれています。地球の大気とは多少成分が違いますが、ほとんどが酸素と窒素成分ですから、問題はありません」

「動物もいるのかしら」

「はい、います。あ、夕さん、左側のモニター画面を見てください。中央に移っているのがアノイ星です。これより、衛星航法システムの領域に入ります」

夕のひざの上でナオっちもじっと青い星を見つめていた。
< 39 / 83 >

この作品をシェア

pagetop