★☆限りなく遠い星☆★
市場に入ると、ぷーんとなんだかおいしそうな匂いが漂ってきた。

「お腹すいてますか?」

「ええ、ちょっと」

ダイジュは、懐からピカピカ輝く石を一つ取り出すと、店の前に立って言った。

「トウナツを一つ」

売り子はうなずくと、串に刺さった団子のようなものをひとつ差し出した。

「夕さん、おひとつどうぞ」

「ありがとう。でも、これなあに?」

「トウナツという果物の実でつくったものです。おいしいですよ」

夕は一口食べてみた。

 「本当、おいしい」

甘酸っぱいが、とろけるような舌触りに夕は感動した。

「こんなにおいしいものが食べられるなんて」

「喜んでいただいて、よかったです。はい、もうひとつどうぞ」

ダイジュは、今度は少しピンクがかったトウナツを夕に渡した。

「ありがとう。ダイジュさんはどれにー?あっ、ごめんなさい」

「いいんですよ。気にしないでください」

ダイジュと夕はいろいろ珍しい果物や食べ物が並んでいる屋台の間をゆっくりと歩いて行った。

にぎやかな市場を通り抜けると、やがて夕たちの目の前に大きな湖が広がった。二人は渡船場から大型のホバークラフトに乗り対岸に渡ることにした。対岸の景色は、市場のそれとは対照的だった。大きな岩山が幾重にも連なり、その下に森や草原が広がっている。
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