★☆限りなく遠い星☆★
出発の2時間前、クルー全員がコントロール室に集合しミカサ長官が現れるのを待った。中央の大スクリーンには、海王星とその回りを周回する海王星ステイションの姿が映し出されていた。

地球からの通信はいまだに全くない様子だった。しばらくして、ミカサ長官が副長官とともに壇上に姿を現した。

「えー、いま中央スクリーンには海王星ステイションが映っていますが、ご覧のとおり地球からの映像はなにも送られてきておりません。我々は予定通りに出発しますが、ワープテクノロジーを用いても、通常のコースだと海王星まで4800時間以上かかってしまう。地球の状況を考えるとそんなのんびりした旅はやっていられない。そこで、危険ではあるが、ネル星団の領域を通過する航路をとることにした」

ネル星団と聞いて、室内はざわめいた。

「彼らの聖域を通過する以上、多少の戦闘はやむをえないだろう。しかし、いかにネル星人の戦闘集団といえども、われわれの持っているレーザー砲以上の武器はないはずである。それに、宇宙空間を駆け抜けるワープテクノロジーも我々の技術よりずっと劣っている」

場内は静まり返った。できることならば、戦闘などをせずに海王星ステイションにたどり着きたいと誰もが思う。

「各艇の乗員は、出発の30分前までに、全員乗り込んでいるように。私からは以上です」

中央スクリーンには各艇の乗組員の名前が表示されていた。そのなかにダイジュの名前があるのを夕は目ざとく見つけて、ふと呟いた。

 「ダイジュさんも乗るんですね・・・」

 「ああ、そうね。ダイジュは3号艇のアンドロイドクルーに選ばれたんだわ。優秀ですものね」

 「ダイジュさんって、そんなに優秀なんですか?」

 「ええ。これまでにもいろいろ便利な装置を開発してきたの。航宙艇の操縦もたいしたものよ」

 夕はダイジュのあの透きとおるような瞳を思い出して、
 「ふーん」
とうなずいた。
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