★☆限りなく遠い星☆★
「ワープブースター起動」

機関ミッション・スペシャリストの木村がコントロールパネルのスイッチを押すと、ゴーッという音とともに、急に窓の外の星が白い直線となって後方に流れた。

夕はふっと身体全体が浮いているような感覚にとらわれた。ひざの上で抱いているはずのナオっちも、全然その重さを感じない。

幾つもの星が夕の身体のなかを通り抜けていくような状態がしばらく続く。夕はその重圧に耐えた。

  ふと、窓の外に視線を移すと、今まで直線に見えていた星の光が、今度はゆっくりと後方に流れていく。シンジが星雲間ポジショニングシステムを見つめながら言った。

「MX180に到着です」

「うん、ごくろうさん。他の艇を確認してくれ」

 シンジがヘッドセットのマイクを口に当てて言った。

「リンダ、他の艇が到着しているかどうか確認してくれ」

「はい、1号艇確認、2号艇確認、3号艇確認、4号艇確認。5号艇と6号艇はまだです」

「では到着まで待つことにしよう」

  監視ブースでレーダースコープの画面を見つめていたリンダの声がキャビン内に響いた。

「長官、5号艇と6号艇を確認しました」

 5号艇と6号艇は共に司令艇よりだいぶ離れた空間に到着し、こちらに向かって低速で飛行を続けている。その映像が中央スクリーンに送られてきた。

「よし、ここで四時間ほど休憩しよう。各艇に伝えてくれ」

 シンジとヒロキは他の艇に指示を伝えると、操縦席から離れて大きく背伸びをした。エツミも夕のことが気になって尋ねる。
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