★☆限りなく遠い星☆★
「ピーンポーン」

 ドアのチャイムがなった。夕がドアを開けるとウエンディが立っている。

「夕さん、まだ時間があるから、もしよかったら展望塔へ案内するけど」

 「はい、お願いします。外の星がとてもきれいだったから、もう一度ゆっくり見たかったの。エツミさんも行くかしら」

エツミは通信塔に行っているとウエンディが言った。

 ウエンディは夕を連れて女子寮の正面ロビーを通り、エレベーターで基地最上階の展望塔まで一気に上がった。エレベーターの扉が開くと、目の前に色鮮やかなパノラマの世界が開けた。

「わあーっ、すっごーい!」

窓の外にはフェニックス星雲が赤くきらきらと輝いている。広大な宇宙に羽ばたく真っ赤な鳥みたいだと夕は思った。夕はすっごーいを連発した。

 夕のすっごーいに先に展望室に入っていた三人の新人クルーが一斉に振り向いた。夕はちょっとバツのわるそうな表情をして窓際へ行く。

ウエンディが夕に言った。

「仲間の一人が6号艇に乗っていたのね。みんな心配で、ああやって外を眺めているの。ひょっとしたら6号艇が目の前に現れるんじゃないかってね」

「そうだったんですかー。あたしちっとも知らなかった」

 夕はつかつかと三人に近づいた。ヒロキが夕の方を振り返って見た。

「お友達が6号艇に乗っていたなんてちっとも知らなかった。心配ね」

「いや、あいつは幸運の持ち主だから、きっと現れるさ」

 夕も素直にうなずき、ヒロキの横に立って窓の外を見つめながら呟いた。

「ダイジュさんは・・・・」

 ダイジュの名前を口にしたとたんに目頭が熱くなり、まぶたにうっすらと涙が浮かんだ。

「ダイジュは大丈夫だよ。きっとどこかで生きている」とヒロキ。

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