涙虹
冷
人間なんて信じたらだめ。
なにも良い事なんかない。
信じて信じて裏切られて。
人間なんてそんな物。
平和な世界なんてきっとこない、こんなに空は青いのに…な。
今日は私、水無月 綾菜がこれから3年間通う高校の入学式。
私が教室に入るとすでにグループが出来つつあり安心した。
だって友達なんかいらない。人間なんて信じない。そう決めたから。
私が席に座ると、何人かの小柄で可愛い女の子が話しかけてきたが
冷たく突き放すとすぐに私の元から去っていった。
孤独にならないという保証になってくれれば誰でもいいの?
友達という肩書きを立派にのせて。
そんな息苦しい関係、私なら間違いなく孤独を選ぶのにな。
入学式も無事終わりみんなが教室に帰ってきた。
私の席は窓際の一番端だ。景色見れる…当たりかも。
早速私は、自分の席に向かった。
今日は家に帰って何をしよう、とかいろいろ考えながら歩いていたら
バキッ
鈍い音が鳴った。
自分の足下を見ると
バスケのユニフォームの形をしたキーホルダーが綺麗に割れていた。
するとそのキーホルダーの持ち主らしき人がこっちをすごい顔で見ている。
「すみません。」
私がそう言うと聞こえてないかのようにその破片を集め自分の席に座っていった。
…ムカつく。まずあんなとこにカバン置いてる方が悪いでしょ。被害者ぶっちゃって。
そして自分の席につこうとした瞬間私は息を呑んだ。
私がキーホルダーを割ってしまった相手が隣の席だ。
悪態突かれるに決まってる。でも謝罪はしたしこれ以上怒られてもどうしようもない。
私は変な自信と冷淡な感情と共に席に着いた。
するとすぐに担任らしき男の先生が教室に入ってきた。
「これから一年間、君たちと一緒に思い出を作っていこうと思います。
高校生活を一緒に満喫しましょう!よろしく!」
うわー。どこにでもあるようなセリフ。
教師って生徒の前では立派に、先生やってます、 って
ヅラしてるけど、どうせ裏では生徒の愚痴をこぼしまくってるんだ。
だって私、中学時代に先生が言っていたの聞いたから。
蒼い空の綺麗な太陽のこの空の下。
まともな人間一人もいないんだ。
だから誰も信頼しないし、近づこうともしない。
一人でいる方が断然 楽で、気軽だしね。
「じゃあ、出席とるので名前呼ばれた順に
自己紹介お願いします。」
担任の言葉に我に帰る。
「相沢 美樹」
「伊藤 琉衣」
担任が一人ずつ名前を呼んでいく。
中には自己紹介で笑いを取る子もいた。
そして一人の男子生徒の名前が呼ばれた。
「星野 涼太」
隣の席の人だ。
「はい。」
彼は立った。
「よろしく。」
あまりにシンプルなコメントに教室が静まる。
「ちょ、星野お前、みんな入る部活とか言ってんのに
素っ気ない奴だなーもしかして部活入らんのかー?」
慌てて担任が言う。
「はい?」
担任の表情が固まった。
「ま、まぁいいや。次行くぞ〜」
星野 涼太。異様なオーラがあるな。
あきらかに不機嫌になってるのがわかるけど。
再び名前が呼ばれ始める。
「水無月 綾菜。」
呼ばれてしまった。
私はゆっくりと立つ。
「はい。一年間よろしくお願いします。」
また教室がシンとなる。
変なこと言ったか?
すると担任が口を開いた。
「そこの二人は、なんだ?冷血コンビか?
ちょっと冷たすぎるぞお!先生悲しい!」
は?意味不明。しかもこんな奴とコンビとか言わないでほしい。
私はその言葉を無視して窓の外を見た。
すると、2匹の鳥が
仲良さそうに飛んでいた。