恋愛禁止(ホラー)
伴王介
廣瀬柚乃の実家を訪ねた後、あたしたちの間に会話はなかった。


子供を亡くした親がその後どうしているかなんて深く考えたことはなかったけれど、消衰すきった琢磨さんを間の辺りにすると言葉なんて出てこなかった。


生きていることで精いっぱい。


いや、生きていることさえ苦痛でならないのだ。


思い出すと涙が込み上げてきて、あたしはそれが流れないように目の奥に力を込めた。


今は泣いている暇なんてない。


自分自身が助かるために、やらなきゃいけないことがある。


そう思い歯を食いしばったのだった。
< 193 / 316 >

この作品をシェア

pagetop