恋愛禁止(ホラー)
誰もいない浴室内あたしは大きな声でそう言った。


自分の声が何重にもなって反射して、まるでトンネルの中にいるような感覚だ。


と、その時だった。


ドロリとした液体の感覚が体にまとわりつき、あたしは一瞬小さな悲鳴をあげた。


さっきまで普通にお湯が出ていたシャワーが、今は赤くドロドロとした液体を流し始めている。


「やっ……!!」


それは鮮明な赤色で、サビなどの色ではないことは見ればわかった。


足元にどんどんまたっていく真っ赤な血液。


浴室に充満する鉄のにおいが、ツンッと鼻孔を刺激した。


その拍子に強烈な吐き気が込み上げてきて、あたしはヨロヨロと脱衣所へと続くドアへ手をかけた。


涙目になりその場で嘔吐しながらどうにか脱衣所へ続くドアを開く。


這うようにして浴室から体を移動させると、後方でカタンッと小さく音が聞こえてきた。

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