恋愛禁止(ホラー)
彼女は、あたしのすぐそばまで来ている。


あたしをいつでも殺せる距離まで……。


そう思ったとき、どこからか泣き声が聞こえてくることに気が付いて、あたしはそっと布団の外に顔を出した。


微かな、小さな泣き声。


「なに……?」


その泣き声に引き寄せられるようにしてあたしはベッドを降りた。


1人で行っちゃいけない。


そう理解しているのに、体がいう事をきかない。


寮の部屋を出るとその声は大きくなり、暗い廊下の向こうから聞こえてくるのがわかった。


「いろはちゃん」


あたしはいろはちゃんを起こそうと思い、部屋のドアにもう1度手をかけた。
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