恋愛禁止(ホラー)
しかしそこは誰も姿もなく、次の瞬間今まで明々とお風呂を照らし出していた電気がパッと消えた。


湯船の中であたしは中腰になり、身構える。


彼女はどこから出てくるかわからない。


全神経を浴室内に響き渡る鳴き声に集中させる。


と、その瞬間だった。


4つある鏡のうち一番左側の鏡が突然ガタンッ! と大きな音を立てて外れたのだ。


「キャァ!!」


口に手をあてて悲鳴をあげる。


さっきまで暖かかったお湯は冷水のように冷たく感なり、心臓は今にも張裂けてしまいそうだ。


あたしはどうにか湯船から出ると、鏡の中の空洞に釘付けになってしまった。


ガタガタと体は恐怖で震え思うように動かない。


そして……視線を感じた。


体中に絡み付くような強い視線。
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