恋愛禁止(ホラー)
途端に彼女の目の横から複数のウジ虫がはい出してきて、その顔を縦横無尽に這い始めた。


ざわざわ……ざわざわ……。


耳障りなあの音は彼女の体内から聞こえてくる。


体中にはい回る、ウジの音だ。


「……っどうして死んだの!?」


恐怖に押さえつけられていた声が、ブワッと噴き出した瞬間だった。


浴室内に響き渡るあたしの声。


「……あたしに……どうしてほしいの……?」


あたしは彼女の顔に震えるそっと手を伸ばす。


こんなことにならなければ、きっと美しい女性だったハズだ。


彼女だって、こんな姿になりたいなんて望んではいなかったハズだ。


あたしは彼女の頬に這うウジ虫を数匹、指先で撫でて落とした。
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