恋愛禁止(ホラー)
あたしはそれに引き寄せられるように湯船から出て、鏡の前に立った。


曇っていても姿を写すはずの鏡が、あたしの姿を写さない。


ざわざわ……ざわざわ……。


その音は徐々に大きくなっていく。


あたしはそっと手を伸ばし、鏡に触れた。


その瞬間。


無数の長い黒髪が鏡に絡みつき、うごめいているのがわかった。


その髪はまるで生き物のようにうごめき、あたしの手に絡みつく。


そのヌメッとした感触に足の先から頭のてっぺんまで毛が逆立つ。
< 82 / 316 >

この作品をシェア

pagetop