魔法のハンドクリーム
カサカサの手とあたしの幸せ
「カサカサ」

自分の手を見て、そう呟いた。社内恋愛を実らせ結婚したのは3年前。あの時は毎日自分磨きに専念していた。


給料日には会社帰りにショッピング。コスメにも敏感で新色が出るたびにチェックしていた。


香水はあまり好きじゃなかった分、ハンドクリームやボディクリームにも拘って香りのいいものをつけてたっけ。


それなのに、今のあたしと来たら朝から家事と育児に追われて気がつくとカサカサ。結婚と共にすぐ妊娠してあっという間に一児の母。


そのとき、産まれた千陽はもう2歳。ワガママ放題の大怪獣。イヤイヤ時期真っ只中であたしは毎日イライラしてる。



「ママーッ!ご飯!!」



千陽に呼ばれて急いで彼女のご飯を用意する。結婚前は家事から逃げていたつけか洗い物で手はカサカサでところどころ赤切れしてる。



そんな手は自分で見ていても嫌になるけれど構っていられなかった。
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