魔法のハンドクリーム
「ママーッ!!これ買って」


ふと手に温もりを感じると千陽があたしの手を握り、片手にはお菓子を握りしめていた。

今のあたしの左手は千陽の専用になっているな。



「ダーメ。この間これ買って千陽、食べなかったでしょ?違うものにしなさい」


千陽の手をキュッと握りしめて片手でカートを押しながらお菓子売り場に行く。千陽はパッと手を離してお目当てのものを見つけたみたい。


別に今が幸せじゃないなんて言わない。好きな人と結婚して、子どももいて生活は変わってしまったけれど毎日、それなりに幸せ。



だけどふとしたときに考えてしまう。あたしはもう『ママ』でしかないんだなって。



そういや、洗剤が切れてたんだっけ。


忘れるところだった。ここのスーパーには食品しか売っていないから買い物を済ませて駅前の薬局まで自転車を走らせることにした。
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