魔法のハンドクリーム
薬局に着き、洗剤をカゴに入れてレジに向かう。千陽は大好きなキャラクターのバンドエイドを手にしていたけれど高いから却下。


グズる千陽を抱っこして歩いているとハンドクリームの場所が目に止まった。



せめて、ハンドクリームくらいは塗るかな。そこにあった試供品のハンドクリームを一つ手に取り、蓋を開ける。


甘くて癒される香り。そっと手に取り塗ってみるとカサカサだったあたしの手が少しだけ透明感を取り戻した。



「・・・いい匂い」
「チーも!チーも塗る。いい匂い塗る」



ハンドクリームを塗った手を嗅いでいると横から千陽がピョンピョンと飛び跳ね、自分にも塗れと催促する。


仕方がないからほんの少しだけ手に取り、千陽の手にも塗ってあげた。



「いい匂い」



最近、なんでもあたしの真似をする千陽。自分の手を鼻に持って行き、匂いを嗅いでいる。確かにこれなら香りもいいし、ツヤツヤになる。


カゴに入れようと手に取ったけれど値段を見てそっと元の場所に戻した。節約、節約。


結局、その日はハンドクリームを買わず、洗剤だけを買って家に帰った。
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