春のこころ
「……反省、かな」
「反省って、碓氷くんが?」
「そう。だって、桃野、バレンタインにチョコ渡すつもりだったでしょ?」
気まずそうに話す碓氷くんに、記憶がバレンタインまで遡る。確かに渡そうとして、渡せなかった。
ちょうど、そうだ。聞いてしまったから。
渡すのをやめたんだ。
「俺が騒いだせいで、桃野のきっかけを奪っちゃったんだよね。転校するってわかったから、渡さなかったんだろうなって思って」
「でも、渡さなかったのはわたしの意思だよ」
「うん。それでも、俺が騒がなきゃ2人はうまくいってたかもしれない。だから、もう一度きっかけを作れたらって。ごめん。
しかも、今さら何だって感じだよね」
知らなかった。そんなことを思ってのことだったなんて。
騒いだのは碓氷くんだけど、碓氷くんはまったく悪くないのに。わたしが勝手に渡すのをやめただけ。
わたしが、怖かっただけだ。
「碓氷くんはまったく悪くないよ。気にさせちゃって、ごめんね」
わたしが、臆病だったから。ごめんね。