春のこころ
「……ありがとう」
「あはっ、こちらこそ。どうもありがとう。余計なことして、とか思ってごめん」
「やっぱ思うよね。そんな仲良くもないやつが、いきなりだし」
理由がわかって良かった。もし、あのとき知らないままいたら、チョコは渡してたかもしれない。
でも、告白まではしていなかったんじゃないかと思う。
フラれたら、嫌だし。
「ううん。そんなに気にしてくれてありがとう。おかげで、プレゼントもわたしがあげたいなーと思ったものが買えたよ」
碓氷くんに言われなきゃ、わたしはあれは買わなかっただろうから。感謝だ。
そのときはいらっとしたこともあったけど、話を聞いた今は良かったと思う。本当に。
後悔が、たくさんあるままになるところだった。
「告白はしないの?」
「……うん。それは、もういいんだ」
そっか、とうなずいた碓氷くんに微笑んで見せた。心配ないよと伝わるように。
嬉しい言葉ももらえたし、これで笑って、朝奈のことを送り出せる。