春のこころ
「最後なんてやめてよー。寂しくなるじゃん」
笑って、おどけてみるけど、朝奈は眉を下げて笑うだけだった。
笑って送り出すんだよ。プレゼントを渡して、笑って、またねって。
笑おうとするのに、口が、うまく上がらない。
「うん。でも、最後じゃん。良い思い出になった。桃野と話せて、良かっ──」
最後まで言い切れなかったのは、わたしのせいだろう。わたしが、泣いてしまったから。
泣かないと思ってた。でも、ダメだった。
寂しいよ。バカ朝奈。最後かもしれないってわかってるけど、最後なんて聞きたくない。
「ごめっ、寂しくなっちゃって……あ、早く行かなきゃだし、あと、これ!」
誤魔化すようにごしごしと目をこすって、なるべく明るい声でプレゼントを差し出す。
朝奈の驚いた顔が、わたしが泣いたからなのか、サプライズに驚いてくれたのかは、よくわからなかった。
「みんなから、朝奈へ」
「ありがとう」
全然うまくやれなかったわたしだけど、朝奈はそれでも笑顔を見せてくれる。
そんな朝奈が、やっぱりわたしは好きだった。