春のこころ
「ほら、朝奈。真ん中並んで並んで!」
朝奈の背中を力強く押した。
もう泣かないよ。告白も結局できないままだったけど、これでいい。
1年幸せだった。それだけあれば、大丈夫。
名古屋へ行っても元気で。言葉にはしないけど、少しでもそれが伝わるように。
「はい、とるよー」
「あ、撮りますよ?」
「えっ、すいません。お願いします」
通りがかった人の厚意に感謝だ。これも朝奈のおかげかな、なんて。
みんなに急かされ、朝奈の手招きもあって、朝奈の隣にしゃがむ。肩がぶつかりそうなほど近くで、心臓の音が耳元で聞こえるような気がした。
こんなどきどきも、今日までなんだ。
「……朝奈、ありがとう」
好きにならせてくれて。わたしに、笑顔を向けてくれて。
本当に、ありがとう。
「ん、こちらこそ」
隣の朝奈が、小さく笑う。わたしの大好きなあの笑顔で。
わたし、本当に幸せだと思う。
「じゃあ、撮りますよー。ハイ!」
そうして、朝奈は名古屋へと行ってしまった。