春のこころ


「クラスの人の分とは別に、桃野(ももの)だけからも買ったほうが良くない?」

「え、どうして?」


それは、やっぱり碓氷くんがさっき選んだものを買いたいからってことだろうか。

クラスのみんなが納得してくれるならそれもいいけど、どうかなあ。予算もうちょいあるわけだし、いいものを、


「何となく」


桃野がそうしたいんじゃないかと思って。という無声が聞こえた気がした。

碓氷くんははっきりとは言わないけど、わたしのことを見透かしているみたいだ。


「いいよ。わたしからだけっていうのも変だしさ」

「……晴(はる)、もらったら喜ぶと思う」


ずるいなあ、碓氷くん。そんなこと言うなんて。

碓氷くんは、きっとわたしのことをわかった上で言ってる。わたしが朝奈(あさな)のこと好きなのを、わかって。


「そりゃー、1年過ごした友達だもん。誰からもらっても喜んでくれると思うよ」


わざと誤魔化すと、碓氷くんは何かを言いたそうだったけど、店員さんの明るい声がそれを遮った。

アイスティーを受け取って、碓氷くんが何も言わないことにホッとする。これ以上、朝奈のことで聞かれたくなかったから。


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