春のこころ
「名古屋って遠いかなあ。わたし大阪なら行ったことあるんだけど。大阪よりは近いよね」
「新幹線で1時間半くらい?」
良かった。わたしがそらした話題に、碓氷くんものってきてくれた。
そう思ったのも束の間。
「晴に会いに行くの?」
どうして、わざわざわたしが話題を変えたのに。それとも朝奈が転校するのは名古屋なんだから、まったく違う話題にしなかったわたしのミスか。
だいたい、そんな仲良くもないんだから、ほっといてくれればいいのに。わたしがどうしようと、勝手じゃん。
「ただ話したかっただけだよ」
「へえ。行けばいいのに」
碓氷くんはどうやら、空気が読めない人らしい。わざとだろうけど。
「碓氷くんに関係ないじゃん」
アイスティーが、冷たい。やっぱりホットにしとくんだったかな。
いくら天気予報で春の日差しだと言ってても、まだ少し肌寒い。お店の中はそんなに暖房がきいていないからか、指先が冷えてきた。
あ、あと桜ロールも頼むんだったかなあ。甘いものでも食べたら、もう少し気持ちも落ち着いてたかもしれない。