春のこころ
「ごめん。なんか、おせっかい」
困ったように笑った碓氷くんは「今日寒いね」とホッカイロを差し出してくれた。
突き放してしまって、優しくされると居心地が悪い。
「ありがとう」
それだけしか言えなかった。だって口出ししてほしくないのは本当だから。
特別なことは何もしたくない。みんなと同じように送り出せれば、それが一番いい。
そうしたら、また会えたときに気まずさもないんだから。
「予算結構あるわけだし、桃野がいいなと思ったものも買おうよ。俺がそう思ったのと」
「……うん。でも、碓氷くんがさっき選んでたのはナシだと思うよ。使い道なさそうだったじゃん」
「わかってる。あれはちょっとふざけてたし。飲み終わったらもう一回見に行こう」
そうだね。うなずいてから、片手にもらったホッカイロを持ちながら、アイスティーを勢い良く飲み干した。
ちょっと、碓氷くんに負けたかもしれない。