春のこころ
もう、いつからそんな気持ちがあったのかわからない。
気づいたら、とても自然に、当たり前のように好きという気持ちがそこにあった。まるで最初からあったみたいに。
「見すぎ」
ハッと気づくと、碓氷くんがクスクスと笑っていた。恥ずかしくなって、朝奈から視線を外す。
見すぎだと言われるほど、見ているという自覚はなかった。
「き、今日の主役なんだから、見てても不思議じゃないでしょ」
「うん。そんな見つめるなら、話してくればいいのに」
「碓氷くんだって、話してくればいいじゃん。もう注文しばらくしないよ」
立ち上がった碓氷くんは「ちょっと話してくる」とさっさと行ってしまった。あれは絶対わざとだ。
それでも、わたしは行かない。碓氷くんの手には乗らないんだから。
碓氷くんが行けば、わたしも行くと思ったら大間違いだ。それか、行けないわたしへの意地悪か。
そんなもの、全然気にしない。