春のこころ


「……」

「桃野、体調悪い?」

「違う違う。ちょっと、暖房ききすぎかなって思って……」


ふざけんな碓氷。心の中で暴言を吐きながら、前で歌っている碓氷くんを睨み付けた。気づいてないか、気づいてないふりか。

わたしにはよくわからないラップを歌うのが終わった朝奈に、碓氷くんが何か話しているのはわかったけど。まさか朝奈をこっちに寄越すとは思いもよらなかった。

おせっかいも、ここまでやるのか。どうしてなのか知らないけど、わたしが決めたことをわざわざ邪魔するようなことはやめてほしい。


結局、プレゼントだってわたしが朝奈にあげたいと思ったものも買っちゃったし。流されるわたしも、わたしだけど。


「暖房ちょっと消しとくかー。大丈夫?」

「平気。暑かっただけだから」

「なら良かったけど」


突然朝奈が来るから熱くなった、とは口が裂けても言えない。カラオケが暗くて良かった。

きっと頬の赤さはばれてない、はず。


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