死にたがりの少女をさらった愛することを忘れた狐
目が覚めたその場所は
見たこと無い天井が広がっていた
「・・・ここは・・」
「目が覚めたか」
声がする方向を見る
そこにはあの狐さんがいた
「夢じゃないの?」
「お前、夢だと思って手を取ったのか?」
狐さんはため息を吐いた
「だって・・こんな現実離れしたこと信じられるわけないですもん」
「・・・はぁ。」
リン_と鈴の音が聞こえた
体が勝手に動く
いつの間にか狐さんの前まで来ていた
その瞳は私の全てを見透かしてるようで
「お前、誰も信じられないんだろう」
そう笑う顔はどこか悲しそうに見えた
「・・・・」
「その手首の傷は生きてきた証、と言ったところか」
掴まれた手首は動かない
もとより体がまったく動かない
「本当にお前たち人間は頭が悪いな」
その声は小さく、かろうじて聞き取れた
「何れは死ぬ。何故そんなに生き急ぐ必要がある?」
「何故って、それは人それぞれ理由があると思います」
「死にたがりのお前が言える言葉じゃないだろうがな」
ふと、身体は動く
「なぜ、私を連れて来たんですか?」
「何故?単なる気まぐれだ。」
狐さんはふい、と顔を逸らしながら答えた
その顔さえ綺麗でドキドキしてしまう
「お前はここに来てしまった以上、もう人間界には戻れない。」
「え?!」
「なんだ?それとも戻りたいか?」
脳裏に浮かぶのは忌々しい記憶だけ
ああ
そっか、まだ私はどこかで居場所を探してた
あの世界でもなお
誰かが私を必要としてくれると信じたかった
「お前の居場所はないぞ。」
狐さんの一言で全てが崩れていった
私の全てが一瞬で否定された瞬間だった