【完】籠球ロマンティック
「今日は、ラブにはストリートボールの選手三人のそれぞれの役割を説明しようと思う」
一時間、みっちり体に基礎を叩き込まれてソーダーの瓶を片手に座り込んでいた俺に、影のかかった笑顔を向けてくるイツ。
「ん?役割?ストリートボールってポジションとかあんの?」
「5on5みたいにポジションが決まってる訳じゃないけど、流れとしての役割はなんとなく決まってる」
A4サイズのホワイトボードと小さな磁石を持ったイツが横に座ると、フロアに寝転がっていたマカロンがそのまま転がって近寄ってくる。
「もー、マカロンってばだらしなぁい」
「ハーシー、重い」
その、寝そべったマカロンの腰を枕に横になるハーシーは、まるで飼い主にじゃれる猫のよう。
「ちょっとー、ムサイわよこの光景!」
「えー、じゃあリッコが膝枕してくれるの?」
「焼くよハーシー」
ハーシーのセクハラ発言に食い気味に被せるイツは、完全にシスコンゴジラモード。
エアーで煙草を挟む指先を作り、それを空中で動かすイツの目の色は、かなり本気に見える。
「と、とりあえず、本題に入ってほしい」
「お?あ、そうだったな」
そのシスコンっぷりにドン引きしつつ声をかければ、平常運行の爽やかな顔になりフロアにホワイトボードを置いた。