【完】籠球ロマンティック



横浜特攻部隊の人気か、ヒイロの人気か、はたまたイツの人気か。


とにかく、わりと多いギャラリーと、かけられた音楽の重低音に、否が応でも圧迫感を感じるこの空間。


そんな中で、本番さながらに行われる3on3の打ち合い。


イツからボールが回されると、自分より遥かに体型の勝った相手がべったりとディフェンスに引っ付いてくる。


抜くどころか、たった数センチ動いただけでボールを奪われてしまいそう。


そんな錯覚に陥ってしまう程に、相手の作る壁は厚く、高かった。


「……チッ!」


こうなってしまうと、俺は味方であるイツかヒイロに頼るしかない。


ノールックでヒイロにボールを回すと、相手方の選手は切れ長の一重で俺を興味深げに観察してくる。


「冷静だ。けど、お前にはパスしか選択肢が無いのが、そろそろ分かってきたよ」


「ぐっ……!ンなこと、ねぇけどな」


強がってみたものの、それは曲げられない事実であり、俺は一本もオフェンスに回っていない。


「ラブ!パスで勝てるのは5on5だけだぞ!これが俺達じゃなくてあいつ等だったらどーする!」


「分かってる!」


分かってるから悔しいんだ、コンチクショー。


イツのその言葉と、強引に点をかっぱらうヒイロの姿に、思わずイライラとした声を出してギシ、と歯を軋ませた。
< 112 / 388 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop