【完】籠球ロマンティック
「なぁラブ、お前萎縮してない?」


「してな……いや、してるよ。やっぱり、改めて5on5との違いを感じる」


ぐるりと囲むギャラリーの熱を肌に感じる程の距離、耳が犯されているような大きな音楽、ハーフコートでの息苦しさ、その全てに、萎縮しているんだ。


正直に答えた俺に、イツが柔らかな微笑みを浮かべ、そして、俺の頭を強めにガシガシ撫で付ける。


「はは、正直で宜しい!でもな、そんなのラブらしくねぇって。いつもみたく、のびのび、生意気に、キラキラしてみせろよ」


「……おう」


のびのび、生意気に、キラキラ……か。


そう言われてもいつもどうやってバスケしてるかなんて分からないってか、寧ろ、いつもはなんも考えてないし。


強めに撫でられてヒリヒリする頭皮と心を小さく漏らした吐息で紛らわせる。


「ラブちゃん、楽しまなきゃ損だよ?」


通り様に、ぽふっと優しくヒイロに背中を押されてはっとする。


もし勝ったとしても、多分、俺はこの試合を楽しいとは思えない。


「だーな。楽しまなきゃ、損するでしょ」


そう思った瞬間、俺にのし掛かってぎゅうぎゅうに圧をかけていたものが、少しだけ力を弱めた気がした。
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