【完】籠球ロマンティック
「ダーチクショ!手が悴んでスローが上手くいかん」
「何だ、お前結構寒がりちゃんなの?アームウォーマー買えよなー」
体育館に着いてから、外で打った分の汗で体が冷えたせいか、本日三本目のフリースローを落とす。
「ウルセェ。バイトの給料家の風呂のリフォーム代に多めに入れたからほぼないんだよ」
「あら、意外と苦労人なんだ。じゃあ俺のやろうか?」
そういえば、イツと家のこととかそういう話、してなかったっけな。
っていうか、お互いの深い環境事情なんて、チーム内でも話したことはない。
決して浅い付き合いだということではないけど、俺達はバスケというルーツで繋がった、強いような脆いような集団なんだと、ふと気が付く。
「らーぶ?どした?ほれ、これやるよ!」
俺の顔を覗くイツは、やはり爽やかなベビーフェイスで、兄貴風を吹かした優しい面持ち。
「何でもないよ。ありがと……って、何だ、このゴジラとドラゴンの刺繍!ジャンルちげぇぇ!」
「えー、イカしてるだろー?」
こんな抜けた会話をする俺達と、楽しそうに笑う周りの連中。
深い絆とかそんなクサイ関係じゃないけど、ミニバスから中学の部活までのバスケ生活より、何故だかキラキラしているような気がした。