【完】籠球ロマンティック
イツにもらった意味不明なデザインのアームウォーマーを寒さに負けて着けると、何だかちょっとだけマシになった気がする。


「寒さは体に悪いからなぁ、ハーシーのおっちゃんにソックス買ってもらいな」


「おいおいイッツん、君の方がおっちゃんでしょーよ」


ストンとフロアの壁に背中を預けて座ったイツは、ポケットから取り出したカイロを右の足首に押し当てる。


「いやぁ、寒いと古傷がヒリヒリするねぇ」


「あ、そーいや、イツって足首やってプロ辞めたんだったっけ?」


俺も隣に同じように座り込み、イツのその足首を人差し指でつん、と触る。


イツの右足にはいつも薄手のサポーターが巻かれていて、その全容が何なのかは分からない。


「まーねぇ。あ、見てみる?」


「はっ……って、おわぁ」


イツの言葉にリアクションを取るより早く、イツは自らの古傷を晒し出す。
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