【完】籠球ロマンティック
「それは、バスケを失っても思えたこと?」


俺の隣に立っていたハーシーが、イツに珍しく真剣な顔で尋ねる。


すらると、イツは呼吸をするくらい自然にふわぁ、と微笑んだ。


「バーカ、失ってないよ。寧ろあの頃は窮屈な世界でしかなかったバスケが、こいつのおかげでもっと広くなったよ。俺は今、ここで自由に踊ってる。毎日が非日常に溢れてる」


なんて満足そうな顔なのだろう。柔らかなキラキラは、そうだ、シャボン玉に似ている。


けれど、イツから出るキラキラは、様々なパステルカラーで柔らかかった。


イツの気持ち……分かるかも。俺も、現役だった頃よりずっと広がる世界を飛んでる、そんな気がするから。


「……にそれ」


しかし、そんなキラキラに、影がひとつ、落っこちる。


「リッコ……?ってうわ、え?リッコ、どうした?」


俺達の元へ来たのはリッコで、満足げだったイツとは反対に、いつものキラキラはひとつたりとも放っていない。
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