【完】籠球ロマンティック
俺がワンショット決めたところで時間が来て、そこでこのつまらない試合が終了を迎える。


点差は勿論向こうの勝ち。けれど、体育館の空気は完全に俺の一人勝ち状態だった。


ボールをモノにして、その空間の空気感を支配出来る感覚が、俺をバスケから決別させないでいる要因。


「……見つけた。救世主!」


その空気を久々に味わっていた俺の知らないところで、あの頃よりもキラキラと光が飛び交う青春が、うねるように動き始める。


「吾妻北中7番……まさかこんなところにいたなんて、ボロ儲けにも程がある」


あのたった数秒のプレイで、まさか俺の『それなり』に変革が起きたのだ。


そして『それなり』の日常をもみ消してしまうほどの非日常が俺の知らぬ間に体中を取り囲んだのは間違いなくこの瞬間だったのだ。
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