【完】籠球ロマンティック
冬の、冷たく乾いた空気が刺してくる外を、特に目的もあてもなく歩くのは、そう嫌な気分でもない、と律子は思う。
空の色は灰色で、今にも雪が落ちてきそう。
はぁ、と故意に息を吐けば、白い息が空の灰色に吸い込まれていく。
「おーい、皇サボリッコ!」
ぼんやりと歩いている律子に、ふと、ふざけた呼び方で声がかかる。
声だけで誰かは分かったが、喜んで飛び跳ねそうな心を押し潰し、振り返る。
「よっ!」
右手を小さく上げた主は、赤縁のスクェア眼鏡をかけた恋夜。
「あんた、アホのくせに学校サボんなし。そのぶんテスト勉強教える時間減るだろ」
「……何よ、レンこそ、見た目とは正反対の真面目秀才のくせに、学校どうしたの?」
「俺は真面目だからね、とっくに単位足りてんの。今日は授業午前中のしか用無くて終わり」
昨日のことがあったというのに、恋夜の態度はいつも通りである。