【完】籠球ロマンティック
論理は止めようと、その長い腕を震わせて手を伸ばした。


しかし、疲労と暴行を加えられた腹部のせいで、声が詰まる。


『先輩、良いから』と、その言葉を秋葉にかけることが出来ない。


秋葉が勇気を振り絞ったことは、その、目の前に立つ勇敢な後ろ姿が頼り無く震えていることで分かりきっていた。


自分が理不尽な怒りを食らえば、この優しく勇敢な、憧れの人物に危害が加わることはない。


なのに、こんな時に限って力が入らない自分に、論理は歯を喰い縛り、ぐっと拳を握った。


「フンッ!良い覚悟だ、綺麗な友情だな。だが、そんなものでインターハイに勝てるか!?勝つのは強者だけだ!」


松尾の怒鳴り声は、隣で練習を行うバレーボール部の手を止めるほどにキン、と響き渡る。


その刹那、バキ、と、耳を塞ぎたくなるような音に、その場の全員が目を閉じた。
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