【完】籠球ロマンティック
「だーもう疲れた、ダリッ!ただいまー!」
今日もみっちり練習をこなし、俺は一人家が遠いところにあるから帰ってきたのは夜十時前。
俺と母さんが住む、2DKの小さな賃貸アパートのボロいドアの鍵穴に、同じくボロいその鍵をぶっさす。
去年の夏、鳶職だった父さんが亡くなってからは、耳鼻科で看護師をやっている母さんとこの小さな賃貸アパートへ移り、細々と生活をしていた。
看護師といえど、小さな町病院の看護師だからうちの家計は結構ギリで。
母さんのカスカスの給料に、俺の年末調整ラインスレスレのバイト代が乗って、なんとかやりきってるって感じ。
それでも、江戸っ子気質の母さんはいつもカラカラ笑っていて、何かにつけて『何とかなるだろ!』って、不安な顔ひとつ見せては来ない。
なのに……やっぱり母さんは『女』で、今でも父さんが大好きで、ホントは辛いんだって、気付いてしまう。
あんなの見りゃ、気付くだろ。