【完】籠球ロマンティック
ドシドシと音を立ててリビングへ足を踏み入れると、そこには、机に突っ伏した母さんの姿。


どっちかというとチビで丸っこくて、父さん似の俺とはあまり似てない。


なんつーか、母さんとリッコってちょっと似てるんだよな。なんてぼんやり思ってしまう。


あ、母さんはリッコみたいにべらぼうに美少女で巨乳でもないけど、なんとなくな。


「疲れてんのかね、全く。風邪引くぞ」


八畳の小ぢんまりしたダイニングの奥のソファーに乗ってるブランケットを握り、母さんの肩にかけてやる。


すると、突っ伏していた母さんが『うん』と小さく唸り、寝たまま顔をひょっこり上げた。


「パ、パ。パパぁ」


「っ!!」


良く見れば、顔には乾いた涙の跡がついている。


『パパ』というのは、生前母さんが父さんを呼ぶときに使っていた呼称で。


いつもは何てことない、みたいな顔してるくせに、ホントはやっぱり無理してるんだ。


父さんの体を焼いて骨にする時、ボタンを押すあの時、ただ一度だけ泣いた母さんのことを思い出して、俺は胸がぶわあ、と苦しくなる。
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