【完】籠球ロマンティック
居たたまれなくて、俺はくるりと踵を返し、自宅とチャリの鍵がついたそれを握り締め、スマホをポッケに入れたままのコートだけを装備品に、再びアパートを出る。


冬のクソ寒い外はやっぱり俺に優しくなくて、無防備な耳がジンジンと痛む。


それでも、立ち止まらずにペダルを漕いで向かう。


空は、冬の澄んだ風を含んだ星空。


こんな満天の星空の夜は、どうしても『会いたくなる』んだ。女々しいけど、どうしても。


キュッとタイヤのゴムが擦れる音を立てて止まった先には、確実に何か出るだろってくらい不気味な、大きな墓場があった。


俺の『会いたい』人……人、という表現で合ってるのかわからないが、とにかく、それはここにいる。


チャリを端に寄せ、迷うこと無くまっすぐ進んで五つ目の墓石を右に曲がると目的地。


『香椎家』と彫られた墓は、俺のじいちゃんと、父さんの眠る墓だ。
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