【完】籠球ロマンティック
泣いた跡が頬に残る母さんの寝顔を思い出し、胸がつきん、と痛み俯き、気持ちを軽くするために隣のヒイロに話しかける。


「ヒイロ、こんな時間に何してんの?墓荒し?」


「うわっ、ヒド!そんな物騒な!昼間墓掃除しに来た時にタオル忘れたのー」


ヒイロは何となく落ち込んだ俺の空気を察してか、軽い言い方で返答をした。


「っていうか、それならラブちゃんもこんな時間にこんなとこって、高校生でしょ?マズくない?」


「そうだけど……うーん、帰るの気まじー」


別に喧嘩したとかじゃないし、ただ俺の気持ちの問題なんだけど。


「んー、思春期だねぇ。はぁ、しょうがない。ついて来て!あったかい寝床を与えてあげるから!」


「え……マジ?」


その好意を甘んじて受けようと思い顔を上げたが、嫌なことを思い出す。


「……あ、今、俺がバイだってイツ君が言ったの思い出したでしょ?あれ、ネタだからね。ホント勘弁!それに今日は……まぁ、来れば安心するよ」


一人でダダダダーっと喋ったヒイロは、俺の二の腕を掴んで立ち上がる。


「あ、一応親御さんにはメール入れといてね。誘拐犯にはなりたくないから」


「お……おう」


何となく、笑顔を向けるその顔がイツに似ていて安心してしまう。


一回草試合しただけなんだけど、きっと、この人は信じて良い人だろう、なんて思った。
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