【完】籠球ロマンティック
「ところでヒイロは墓地行ってた筈だろ?何でまたラブと遭遇したの?」


隣のイツが、タバコをふう、とふかして、店のエプロンを付けたヒイロに尋ねる。


実家だと言うこの居酒屋を、ヒイロも手伝いながらバスケのプロとして頑張っているのだろう。バスケのプロの年収なんて期待出来ないし。


しかし、今日はどうやらオルフェ一行の貸し切り状態らしく、他の客はいない。


「それがねぇ、墓地でメソメソ聞こえるからお化けかと思って照らしたら、ラブちゃんがいてさぁ」


「は!?メソメソしてねぇし!つかメソメソしてたのは母さんで、何つか、ばつが悪くて家出て、何となく父さんと話したくなったってーの?……あー、何言ってんだ俺!」


どうもこうも、自分のことを周囲に話すのは苦手な筈なのに、この温かい空間では俺は饒舌になってしまう。


「あー、何となく読めた。だからレン、頑張ってバイトしてんだね。お母さん思いだね」


「そんなんじゃねーけど……まぁ、そんなとこ」


自分が特別だとは思わないし、ハーシーみたいなほろ酔いの大人にンなこと言われても、なんて、表面では思ってるけど。


やっぱり、どこか自分のことを認めてくれるその言葉は、嬉しいような気がする。
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