【完】籠球ロマンティック
俺の萎れ具合に、マカロンは小首を傾げて瞬きの速度を早める。


「レン、良くなかった?」


「いやいやマカロン、レンったら学年二位のくせに嫌味よ!カナは一位だし、悩むことないわよこの二人は」


リッコがム、と唇を尖らせてその棘のある言葉を放つのを聞き届けたマカロンは、俺の方に首を戻してまた瞬きの速度を早めた。


「わんだほー」


柔らかく言い放ち、パチパチと拍手をするマカロンは、いかつい見た目なのに可愛いから不思議だ。


「なんかマカロン先輩、最近表情豊かになったね」


「そ?最近、楽し、から」


佳那汰は自分の隣に座るマカロンを、まるでペットの大型犬を可愛がるように撫でる。


その、バスケをしてない時にはワックスで逆立てていない柔らかな銀髪は、鳥の羽根のようで触り心地が良さそう。


「冬かぁ、何か、ホットになることないかしら」


「あるよーりっちゃん。ハーシーさん、昨日愛車が小学生に落書きされたみたいで、半ベソかいて拭いてたよ」


「ちょっとカナ、君、ハーシーの珍事件に遭遇してること多くない?詳しく聞かせてよ!」


二学期の始めには、こんな下らない日常が『それなり』だったのに、今はこんなことでさえキラキラ輝いている気がする。


冬でも温かいなんて初めてだ、不思議とそう思い、良く分からないけれど背中に走ったむず痒い感覚さえ、妙に心地良く感じた。
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