【完】籠球ロマンティック



「ラブ、ちこう寄れ」


「へいへい。何だいゴジラお代官よ」


夜のオルフェとの練習、イツがお代官キャラで俺を呼びつけるものだから、面倒だから投げやりで乗ってみる。


「ラブってさ、もうちょいゴリゴリストリートボーラーみたいな動き出来ない?そんなんじゃ、それこそゴリゴリボーラーのチームに潰されちまうぞ?」


「んー、って言われてもなぁ。ンなのすぐ出来たらやるじゃん?」


イツの言ってることはもっともで、でも、分かったってすぐ出来るものじゃないから困る。


小一の頃からクラブチームに入り、四年生でミニバス、中学生三年間と、九年間5on5しか知らない世界で生きてきた俺。


確かに、父さんの影響で動きはストリートに限りなく近いプレイだけど、正直、完璧とは言い難いと思う。


3on3のある種エンターテインメント性の高いムーブや技巧は、本来5on5ではチームプレーの前に阻まれてしまったり、ルールという名の檻に囲まれ使用出来ないものも多い。


5on5がチーム主体の戦略型のゲームであるのに対し、3on3は個人技が高ければ高いほど綿密な戦略が組めるゲームだ。


3on3を始めてほんの三ヶ月余り。俺は、5on5のルールという名の檻から、未だに完全に脱出出来ないでいた。
< 199 / 388 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop