【完】籠球ロマンティック
イツが、コートのど真ん中に立って俺にボールを投げ付けた。


そして、ちょいちょい、と人差し指で俺を挑発する。


「勝負だ、ラブ」


「……技を盗めってこと?上等じゃん」


口では強気に出たけれど、元プロで、オルフェの中心選手であるイツ相手に緊張しないわけがない。


尋常じゃない手汗を握り締め、それと反して渇ききった喉をなんとか潤すべく、ごくり、と無理矢理舌の裏側から唾液を搾り出し飲み込む。


嫌に耳につくその喉を通る音と、喉仏の動く感覚が更に緊張を高めた。


そんな俺達のやり取りに気付き、練習の手を止めたオルフェの他の連中と、スネイク・オーバドゥの仲間達。


「ねぇリッコ、マカロン。どっちが勝つかな?」


「イツね。レンには悪いけど、イツの方が数段上よ」


「そう、だね」


まるで俺の緊張が伝染するように、体育館全体もピリピリ、と引き締まる空気感に変わる。
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