【完】籠球ロマンティック
「何本勝負?」


「一本先取でいこうか?……さぁ、ラブ、カモーン?」


すっと右手を前に構えたイツは、ほんの数センチしか変わらない筈なのに、とてつもなく大きく見える。


……いかん、怖がるな、立ち向かうんだ。


ターン、ターン、とフロアに叩き付けるようなストロークでドリブルを始めた俺は、適度な距離を保ちイツに近付く。


インサイドからカットインするのは、不可能に近いだろう。


俺は、ゆるゆると上下左右に動いていた足をスキップステップさせ、アウトサイドから回り込む。


「やっぱり頭良いね、ラブは」


だが、イツは俺の動きにも動揺を見せることなくサイドステップで適度な距離を保ったままついてくる。


ボボボ、と遅めのテンポだったドリブルを急速に早め、手を後方に素早く回して……。


「ビハインドに入るタイミングも絶妙。けど、そんなんじゃ俺は抜けないよ!」


「っ!!」


完璧に抜けた、と思っていたのにイツはそれにさえ素早く反応し、バシィ、とボールをスティールしてみせた。
< 203 / 388 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop