【完】籠球ロマンティック
逸人は葉月を引っ張り体育館へ戻ると、出来るだけ無駄な動きをすることなく、葉月の荷物と自分の荷物を纏める。


「イツ……?どうしたの?」


「ごめんリッコ。詳しくはそのうちハーシーから聞いて。マカロン!お前、バイクの免許持ってたな?」


逸人や葉月のいつもとは違う態度に、律子や論理は事情は分からないが緊急事態だと悟る。


うん、と首を縦に振った論理に、逸人は何とか微笑み、自身のバイクの鍵とお金を握らせる。


「今日は俺のバイクでリッコうちまで送って。うちからはタクシー使って帰れるな?ほら、二千円ありゃなんとかなるだろ」


「わかった」


「ありがとう。マカロンはぼんやりしてても理解力があるから、お兄さんは大好きだよ」


つぶらな瞳で心配そうに見つめていた論理の二の腕をポン、と叩いた逸人は、二人分の荷物を背負って立ち上がる。


その逸人の目の前に、この場で一番理解力のある男が、立ち塞がった。


「俺も、行く」


「ダメだ」


「行くったら行く!ほっとけるか、あんなハーシー!」


今日、逸人と共に葉月の彼女を見舞った恋夜は、何となく、肌でこの先の出来事を想定したのだろう。


行くと言ったその瞳は揺るがない。テコでも動かないと言った決意の瞳。


「分かったよ。ついて来い」


こうして、後部座席に葉月を投げ、逸人は運転席に、恋夜は助手席に乗り込み、葉月の愛車は動き出した。
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