【完】籠球ロマンティック
病室の外からその光景を眺めていた恋夜は、逸人のジャケットを、ぎゅう、と力一杯握り締める。


「どうして人が亡くなると、こんなにも静かなんだろ、寒いんだろ……」


恋夜は一年前、父が仕事中の不慮の事故で亡くなった時のことを、そして、今の状況を思い、歯軋りする。


こんな時、いつも自分は泣いている誰かをただ見ることしか出来ない。父の時は母のその姿を。そして今は葉月のその姿を。


「命の灯火ってのは、ちいせぇな。元気にしてる俺達だって、強い風が吹き込めば、その灯火なんてモンは、簡単に消えちまうんだろうな」


自分より10歳も幼い、弟のように思っている可愛い存在の恋夜に、適切な答えを返せない自分がちっぽけな存在だと、逸人は改めて思う。


ぽふぽふ、と恋夜のボルドーレッドに近い髪の毛を撫でれば、それは思っていたよりもサラサラで、細くて、頼りない手触り。


「ホント寒いな……お前が隣にいねぇと、凍えちまうよ」


やりきれなくて呟いた逸人のその言葉は、月光の不思議な力に吸い取られ、後味を残すことなく消えていった。
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