【完】籠球ロマンティック
彼女のお通夜や葬式は、葉月が知るものとは少し違う、キリスト教のものだった。
死は、神の傍に旅立つものだと、幸福なものだと神父が告げる、不思議と温かく、明るい式。
線香の代わりに彼女の棺には、彼女の儚さを際立てるように白い花が敷き詰められ、参列した人間がどんどん棺に一輪、挿していく。
葉月は普段着ないスーツに息苦しく思いながらも、一歩、一歩、彼女の眠る棺へ近寄る。
小さな箱に眠る愛しの彼女は、病室で機械に繋がれていた時より穏やかに、幸せそうに眠っていた。
「金石、君は幸せだったか?俺はね、幸福者だよ。君を好きでいれた時間は、呼吸するだけで幸せだった。君もそうだったなら嬉しいな」
返事のない彼女へ、葉月は甘やかな想いを旅立ちの餞に、最後の口付けを贈った。
温度の無い彼女の唇の感触が、もう二度と葉月の元へ彼女が戻らないというのを、葉月自身に告げているようだった。